平木理平

ライター
1994年生まれ、静岡県出身。カルチャー誌の編集部で編集・広告営業として働いた後、フリーランスの編集・ライターとして独立。1994年度生まれの同い年にインタビューするプロジェクト「1994-1995」を個人で行っている。

執筆した記事一覧

技術・工学・工業

わずか原子一層分。低次元の世界に広がる物性物理研究の醍醐味を知る

早稲田大学 理工学術院高山あかり

わずか原子一層分。低次元の世界に広がる物性物理研究の醍醐味を知る

「物性物理」という言葉を聞いたことはありますか? 聞き馴染みのない方が多いかもしれませんが、「物質の成り立ち、構造、現象、機能」などを量子力学や電磁気学を基盤に解明する学問です。物質の性質の起源を研究するこの学問の知見はさまざまな科学技術に応用されており、スマートフォンが動くのも、青色LEDが発明されたのも、リニア新幹線の開発も、すべて物性物理研究の恩恵と言えるのです。   今回お話を伺った高山さんは、物性物理の中でも2次元や1次元といった低次元の領域の物性(※)を専門に研究しています。我々には容易に想像できないミクロな世界の出来事ですが、高山さんのお話を聞いていくうちに、その研究には未知の可能性を自ら切り拓くことができる“研究の醍醐味”があることを感じました。   さらに話は、学生の物理と数学の学び方について広がっていきます。元々は学校の先生を目指し教育学部で学んでいた高山さんだからこその視点で、今の学校の理数教育の問題点が語られています。学生や教育に携わる方々にも、ぜひ読んでもらいたい内容です。   ※:私たちの住む世界は3次元的空間であり、物質もすべて3次元的な広がりを持っているが、物体の端っこである「表面」では、3次元の結晶とは全く異なる性質を持つことがある。近年様々な実験装置の開発が進み、表面に着目した研究が行われたことで、表面では、3次元の結晶とは異なる2次元の周期性をもつこと、表面特有の物理現象が起きることなどがわかってきた。しかし2次元である表面や界面、1次元であるエッジ、0次元のドットなど、低次元系でおこる物理現象にはまだまだ未解明なことがたくさんある。
産業

イノベーションを創出するため、日本のスタートアップ研究には今何が必要か

関西学院大学加藤雅俊

イノベーションを創出するため、日本のスタートアップ研究には今何が必要か

「スタートアップ」という言葉がもたらす響きは、どこか“光”に満ちています。書店を覗けば、容易に起業家やスタートアップ企業のサクセスストーリーが収められた本が見つかることでしょう。しかし、それはスタートアップに関するごく一部の“光”の面にしか、注目されていないようにも思います。   そこで、イノベーションやアントレプレナーシップ(※)を専門に研究されている加藤雅俊さんに、スタートアップや起業という言葉に潜む実態や問題、そしてイノベーションや経済活性化を巻き起こすには、どんな起業家やそれを取り巻くチーム、支援のあり方が必要だと言えるのか。現在の研究からわかってきたことを伺いました。   ※アントレプレナーシップ:個人あるいはチームが創業機会を発見・活用することで、新しい組織(企業)を設立すること。またはそれに伴うプロセス。
歴史・世界史・文化史

無色透明な歴史など存在しない。合理・非合理のパラメータの自明性を歴史的に検証する

東京大学 経済学研究科山本浩司

無色透明な歴史など存在しない。合理・非合理のパラメータの自明性を歴史的に検証する

私たちは何に基づいて、どんな価値判断をもって、世界を見ているのでしょう? 何が美しくて、何が醜くて、何が正しくて、何が道徳的で、何が健康的で、何が効率的で、何が社会にとって良いことなのか。それらは私たちがこれまでの環境や出来事から学んできた、あるいは知らず知らずのうちに身につけていた考え方に基づいて判断されるのだと思います。つまり、私たちの価値観や意識は我々を囲む社会とその歴史から常に大きな影響を受けていると言えることができます。 では、その「歴史」はどのようにつくられてきたのでしょうか? 東京大学経済学研究科の山本浩司さんは近世のイギリス経済史を領域に、まさに「歴史」がどのようにつくられてきたのか、多様な史料を手がかりに、自明となっているような歴史観をもう一度解きほぐす研究を行っています。現代では「教養」としての歴史が注目されていますが、山本先生に単に過去の出来事をインプットするだけにとどまらない、歴史学の意義と奥深さ、そしておもしろさに満ちた話をしていただきました。