平川友紀

ライター
リアリティを残し、行間を拾う、ストーリーライター・文筆家。1979年生まれ。20代前半を音楽インディーズ雑誌の編集長として過ごし、生き方や表現について多くのミュージシャンから影響を受けた。2006年、神奈川県の里山のまち、旧藤野町(相模原市緑区)に移住。その多様性のあるコミュニティにすっかり魅了され、気づけばまちづくり、暮らし、生き方・あり方などを主なテーマに執筆中。

執筆した記事一覧

自然科学

「おもろいな」が起点になっている研究は意味がわからなくてもおもしろい

京都大学酒井敏

「おもろいな」が起点になっている研究は意味がわからなくてもおもしろい

海洋物理学者として地球流体力学の研究を手掛けてきた酒井敏さんは、後年、ヒートアイランド対策に非常に有効な「フラクタル日除け」の開発や、自由な校風で知られる京都大学でもとりわけ個性が際立つ教授らを講師に迎える「京大変人講座」を主催するなど、分野の枠を超えた、多種多様な活動を行なってきました。 「自分がおもしろいかどうか」を基準に、そのときそのときの興味関心を追求してきたという酒井敏さんに、研究者としての思考の片鱗と、その半生を伺いました。
技術・工学・工業

グリーンケミストリーに基づいた材料がちゃんと使われる社会をつくる

京都大学齋藤 敬

グリーンケミストリーに基づいた材料がちゃんと使われる社会をつくる

グリーンケミストリーは「環境にやさしい化学」とも言われ「化学物質を合成する人たちが、環境に配慮してものをつくるためにはどうすればいいかを考える」という、極めて現実的な化学の概念です。 グリーンケミストリーの黎明期から、研究者として第一線に立ち続けてきた齋藤敬さんは、2021年、13年もの間研究室を構えていたオーストラリアのモナッシュ大学から、京都大学の総合生存学館に移ってきました。総合生存学館には、グリーンケミストリーを研究し続けた先に見えてきた、ある課題を解決できる仕組みがあると感じたという齋藤さんに、その真意と狙いを伺いました。
産業

サービス本来の価値は、闘い、承認され、新しい自分になること

京都大学 経営管理大学院山内裕

サービス本来の価値は、闘い、承認され、新しい自分になること

特にエスノメソドロジー(UCLAの学者が中心となって50年代に生み出した、人と人、人と機械とのインタラクションをビデオで撮って、細かく分析していく研究手法​​)の観点から、鮨屋をはじめ、数多くのサービス提供者と客の間のインタラクションを分析し、サービス概念を再検討してきた山内裕さんは、現在、京都大学経営管理大学院に在籍し「サービスの文化」に注力して研究を進めています。 「サービスは闘争である」という、これまでのサービス理論を打ち破るテーゼは、私たちが無意識に行っていたサービス本来の価値に気づき、新鮮な視点で物事を見るきっかけを与えてくれています。いったいなぜ、サービスは「闘争」なのか。そして、新しい価値をつくることとはどういうことなのかを伺いました。
芸術・美術

アートと研究の境界を超え、最先端技術で「自然の中の美」を発見する。

京都大学土佐尚子

アートと研究の境界を超え、最先端技術で「自然の中の美」を発見する。

アーティストであり、研究者でもある土佐尚子さん。芸術とテクノロジーをつなぐ「カルチャラル・コンピューティング」を提唱し、数多くの作品制作や研究を行なってきました。アートと研究の境界を自由に行き来できる土佐さんだからこそ、具現化し、表現できる世界があります。「この先どうなるのか、自分でもまったくわからない」と語る土佐さんに、多くの作品が誕生してきた背景やその根底にある思考の変遷を伺いました。
文学

「70億の力」≒「究極の選択」≒マシな未来

立教大学大庭 弘継

「70億の力」≒「究極の選択」≒マシな未来

大庭弘継さんは、海上自衛隊に8年間勤務したあとに研究者になったという異色の経歴の持ち主です。子どもの頃から国際政治に興味をもち、自衛隊に入隊。その後もさまざまな国際政治の問題に向き合ってきました。 さらに近年は、あらゆる分野に内在する、誰もが納得する正解が存在しない問題「究極の選択」をテーマに、分野を横断した研究を続けています。正解が存在しないからこそ、自分たちの運命を自分たちで決める必要がある。そのために「究極の選択」と向き合う社会をつくりたいという大庭さんに、その真意と、現場を大切にしてきたからこそ見えてきた未来について伺いました。
自然科学

興味をもつ人が少ないから、ナメクジは今もわからないことだらけ

岡山理科大学宇高 寛子

興味をもつ人が少ないから、ナメクジは今もわからないことだらけ

宇高さんは、日本でも数少ないナメクジの研究者として知られ、ナメクジの生活史の解明を中心に、さまざまな研究をされています。 そもそもナメクジは、研究している人自体が少なく、今もまだわからないことだらけの生物なのだそう。そう聞くと、どうしてナメクジの研究を始めたのかが気になってしまうのですが、宇高さんはきっぱりとこう言い切ります。 「ナメクジのことは、特に好きというわけではありませんでした」 きっかけは学生時代、本当にたまたま研究テーマにナメクジを選んだから。いわば、偶然です。でもそこから、興味をもつ人が少ない分野ならではの研究の面白さや苦労を感じつつ、ナメクジの研究を続けてこられました。 研究者がいかにして研究者になり、研究者であり続けるのか。地味で地道で、果てしないプロセスの中で未知の世界と向き合い続けるその視線の先を探っていきたいと思います。